クメ マナブ
Manabu Kume
久米 学 所属 石巻専修大学 理工学部 職種 准教授 |
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言語種別 | 日本語 |
発行・発表の年月 | 2012 |
形態種別 | 研究論文(学術雑誌) |
査読 | 査読あり |
標題 | 農業用の水路における季節と生活史段階に応じた魚類の生息場利用 |
執筆形態 | 未選択 |
掲載誌名 | 応用生態工学 |
出版社・発行元 | 応用生態工学会 |
巻・号・頁 | 15(2),147-160頁 |
著者・共著者 | 永山 滋也,根岸 淳二郎,久米 学,佐川 志朗,塚原 幸治,三輪 芳明,萱場 祐一 |
概要 | 氾濫原に依存した生活史を持つ魚類にとって農業用の水路は代替の生息場として機能している.それゆえ,季節や生活史段階に応じた魚類の水路利用や生息場特性を把握しておくことは,保全上重要である.そこで,本研究では,岐阜県関市の 4 地域において,灌漑期 2 期 (6 月,8 月) と非灌漑期 2 期 (9 月,2 月) にわたり,水涸れしない農業用の水路を対象として調査を行った.全調査期にわたる総採捕個体数に占める割合が 5 %以上であった魚類を優占種と定義したところ,6 種が該当した.これらの体長頻度分布および個体数の季節変化から,水路はアブラボテ,カワムツ属,ドジョウ,ヨシノボリ類の稚魚期における成育場,それ以外の生活史段階を含む冬季の生息場 (越冬場) として利用されていることが示唆された.また,生活史段階を特定できなかったが,シマドジョウ類の成育場および冬季の生息場として,さらに,当歳魚を含む小型個体 (39 mm 以下) のオイカワの成育場および冬季の生息場として水路が利用されていることが示唆された.水路底が土砂の水路 (土砂区間) では,コンクリートの水路 (コンクリート区間) よりも,8 月を除く 3 調査期において魚類の総生息密度は有意に高く,種多様度は冬季においてのみ有意に高かった.また,水深,砂割合,小礫割合も,全調査期において土砂区間の方が有意に高かった.魚類の生息密度に影響を与える物理環境として,温暖な時期 (6 月,8 月,9 月) ついては,優占 種 6 種中 4 種に対して水路底の土砂 (シルト割合,砂割合,小礫割合) が検出され,それぞれ生息密度と正の関係を示した.土砂は魚類の生息場や産卵場の基質,餌資源の生息場基質となることから,水路底に土砂を持つ土砂区間はコンクリート区間より適した生息場であったと考えられる.寒冷な冬季 (2 月) になると生息場のシフトが見られ,4 魚種についてカバー率,1 魚種について水深が重要な物理環境として選ばれ,それぞれ生息密度と正の関係を示した.カバー率は,土砂区間に含まれる素掘りの土羽水路の区間で高く (25. 4%) ,コンクリート区間 (1. 2%) や柵渠 (6. 0%) では低かった.また,水深も土砂区間の方が大きかった.このことから,カバーや大きな水深 158 応用生態工学15 (2) , 2012 が魚類の冬季生息場として適しており,それが担保された土砂区間で魚類の生息密度や多様度が高くなったと考えられる.加えて,アブラボテの生息量は産卵期以外も含む 3 調査期において二枚貝の生息量と密接な正の関係にあることが示された.以上のことから,灌漑期と非灌漑期を通した魚類生息場として農業用の水路を捉える場合,水路底の土砂やカバーがセットで水路に存在することが必要であると結論される.このような水路としては,素掘りの土羽水路が理想的ではあるが,少なくとも柵渠 (側岸だけコンクリートや板で固定) とすることが望ましい.柵渠においても水際部の植生やえぐれによるカバーを確保するためには,土砂の堆積や維持に関わる水理条件を整えると同時に,堆積を許容する設計が必要である. |
DOI | 10.3825/ece.15.147 |
ISSN | 1344-3755 |
NAID | 130004541655 |